帰れない二人

エッセイ

彷徨う言霊

うつろな瞳で愛してると君が言う
適量のODでおよぐ君の瞳から
その頬を伝って涙がこぼれる
少し冷えてきた午前2時の異様な光景
冬の手前の帰れない二人
何も見なかったように通り過ぎる
残業帰りのサラリーマンと
二人を冷やかす酔っぱらいの声が
ビル風に乗って反響する
そんな僕もお酒と薬で朦朧とする中
官能的な悪夢にうなされる
無責任な親ガチャと人は言う
でも確かに僕らは存在し
その生きる証を求めて彷徨う
誰よりも愛されることを強く願い
虐げられた過去を許そうと願うたび
親と子の気持ちは反発し合い
またこの場所へと戻ってくる
そして大人の差し伸べる救いの手を跳ね除け
ふたたび僕らはここで愛し合う
君は眠っているのか分からないまま
僕らは抱き合いながら夜を明かす
冬の手前の帰れない二人

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